飯尾醸造の酢造り
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4.酢造り
私どもでは昔ながらの「静置発酵」という製法でお酢を造ります。時間と手間、そして職人の勘が必要ですが、旨味のもとになるアミノ酸が多く、まろやかな味わいの酢に仕上がります。
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米酢の仕込み
自社蔵で造った酒をお酢蔵に運び、ようやく米酢の仕込みが始まります。タンクに種酢と水、酒を入れて40℃に温め、表面に酢酸菌膜を浮かべます。この酢酸菌膜が2〜3日後にはびっしりとタンクの表面を覆い、酢酸発酵が始まります。
この酢酸菌は、私どもの蔵に130年以上前から住みつく伝家の菌。この菌が持つ個性が「富士酢」の味や香りの個性となります。また、酢を造るのには、種酢として全体の3分の1量の酢が必要です。俗に言う「うなぎ屋のたれ」のように、創業時の酢が継ぎ足されて次の酢になり、その次、またその次へと代々つながり、現在の味になっています。
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酢酸菌膜がアルコールを酢に変えてくれます
静置発酵
私どもの蔵では「静置発酵」とよばれる昔ながらの製法でお酢を造ります。これはタンクの表面の酢酸菌が、80日〜120日と、ゆっくり時間をかけて自然にアルコール分を酢にかえていく発酵法です。時間と手間、職人の勘が必要ですが、醸造している間に酢酸と水が調和し、まろやかで旨味の多いお酢を造ることができます。
残念ながら多くの酢のメーカーでは、効率を優先させるために機械で人工的に空気を送り込み、1~2日で発酵を終えてしまいます。この速醸法は「全面発酵」と呼ばれています。
※酢酸菌は好気性の菌で、空気に触れる面で発酵します。「静置発酵」では液面でしか発酵が進まないのに対し、液体内に空気を送り込む「全面発酵」では全体で発酵が進むため、速くお酢ができます。
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蔵の中は発酵中のお酢のいい香りがただよいます。およそ100日間の「静置発酵」の後、240~300日間じっくりと熟成させます
ゆっくり熟成
発酵が終わった酢は、熟成蔵に移され、ゆっくりと時間をかけて熟成されます。その間もただ寝かせておくだけではなく、何度もタンクからタンクへの移し替えを行います。5回以上の移し替えで空気に触れさせてやることによって、できあがりの酢は、よりまろやかな風味に仕上がるのです。
ワインで言う「デキャンタージュ」と同じことですが、タンクの単位で行うのは手間のかかる作業。最高の状態で皆様の元にお届けできるよう、最後まで手を掛けております。
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