酢の歴史

酢の起源

酢は人間が手を加えて作った最古の調味料と言われています。まず、人の祖先は果物などを蓄えることを覚えました。それが自然にアルコール発酵してお酒が生まれ、そこへさらに菌が働いて誕生したのがお酢だと考えられています。

酢の語源

フランス語でお酢を意味するのはvinaigre(ビネーグル)。これはvin(ぶどう酒)+aigre(すっぱい)を合成してできた言葉です。つまり、お酢とはお酒がすっぱくなったもの、という意味なんです。

酢の歴史

酢の起源は古く、紀元前5000年頃の古代バビロニアの記録には、干しぶどうやナツメヤシを利用してお酢を造っていたとあります。『旧約聖書』にも、酢は飲み物として登場しています。

興味深いのは、古代の人々も酢が体に良いことに早くから気付いていたこと。ギリシャでは医学者のヒポクラテスが病み上がりの病人に酢を摂るようにすすめていたそうですし、中国でも周の時代には、漢方薬としてその効能が認められていたそうです。

日本で酢が造られるようになったのは、4~5世紀ごろ。中国から酒を造る技術とともに米酢の醸造技術が伝えられ、和泉の国(今の大阪府の南部)で造られるようになったのがはじまりとされています。

奈良時代の『万葉集』には酢料理の「なます」を詠んだ歌があり、これが日本では最古の酢に関する記述だと言われています。

『養老律令(718年)』には、作酒司(さけのつかさ)が酒とともに酢を造っていたことが記されています。ただし、当時のお酢は朝廷や貴族専用のもの。庶民には手の届かない贅沢品でした。

酢が調味料として一般に広まったのは江戸時代になってから。お酢の製法が全国各地に広まり、それとともにお酢をつかった料理もたくさん生まれました。

はじめてお寿司が生まれたのもこの頃。ごはんに酢を混ぜて押し寿司にする「早ずし」と呼ばれるものです。幕末になると、「にぎり寿司」や「いなり寿司」が誕生し、庶民にも大変な人気だったそうです。

その後、大正時代になると、合成酢が登場します。これは石油や石灰石を原料とした氷酢酸を薄め、グルタミン酸やコハク酸、人工の甘味料など数種類の食品添加物を加えたもの。戦中・戦後の食糧難の時代には、米を原料として酢を造ることが禁止されていたため(昭和12年から28年まで)、一時は市場の大部分をこの合成酢が占めていました。

昭和45年から氷酢酸を少しでも使ったのもには“合成酢”の表示が義務づけられるようになったため、醸造酢の生産が合成酢を上回るようになり、現在では合成酢を目にすることはほとんどなくなりました。

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